LAL-Dの徴候や症状

LAL酵素は、特定の脂質とコレステロールの分解で中心的な役割を果たしています。LAL酵素の働きが弱くなったり、無くなったりすると、脂質とコレステロールは分解されず、さまざまな組織や臓器にたまっていきます。脂質とコレステロールがたまっていくと、全身の多くの臓器に持続的にダメージを与え、臓器が働かなくなる可能性があります[1]。

従来ウォルマン病(乳幼児の場合)またはコレステロールエステル蓄積症(小児期から成人期の場合)と呼ばれてきた疾患は、現在では同じ病態を持つ1つの疾患であると認識されています[2]。これらの名称は現在でも、年齢層によってLAL-D診断に使われることがあります。

小児期から成人期にみられるコレステロールエステル蓄積症(遅発性LAL-D)は、乳幼児にみられるウォルマン病に比べて、さまざまな臨床経過をたどります。小児におけるコレステロールエステル蓄積症の発症平均年齢は5歳です[2]。

成人では目立った徴候や症状のないままLAL-Dが進行することがあり、診断時の最高年齢が男性では44歳、女性では68歳など、中年期以降になるまで診断がつかない場合もあります[1,2]。

以下に、小児と成人のLAL-D(コレステロールエステル蓄積症)の徴候や症状の例を挙げます[2]。
• 下痢
• 腹痛
• 嘔吐
• 貧血
• 吸収不良
• 発育不良
• 胆嚢機能障害
• 肝肥大(肝腫大)
• 肝脾腫
• 肝疾患(胆汁うっ滞)
• 早発性冠動脈疾患
• 脳卒中

より稀で深刻な乳児期発症のLAL-D(ウォルマン病)では、生後1か月以内に脂質が全身、特に肝臓にたまります [3]。ウォルマン病の乳幼児は、重度の吸収不良と発育不良を起こし、治療を行わなければ通常、生後6か月以内に死亡に至ります[1,2,3]。

以下に、乳幼児のLAL-D(ウォルマン病)の徴候や症状の例を挙げます[2]。
• 下痢
• 嘔吐
• 吸収不良
• 発育不良
• 肝脾腫
• 瘢痕肝(線維症および肝硬変)
• 肝不全

他の希少疾患と同様に、LAL-Dは他の疾患にみられる症状を呈するため、診断がつくまでに何年もかかることがあります[1,2]。

 

参考資料
1. Bernstein DL, Hülkova H, Bialer MG, et al. Cholesteryl ester storage disease: review of the findings in 135 reported patients with an underdiagnosed disease. J Hepatol. 2013;58(6):1230-1243.
2. Reiner Ž, Guardamagna O, Nair D, et al. Lysosomal acid lipase deficiency — an under-recognized cause of dyslipidaemia and liver dysfunction. Atherosclerosis. 2014;235(1):21-30.
3. Jones SA, Valayannopoulos V, Schneider E, et al. Rapid progression and mortality of lysosomal acid lipase deficiency presenting in infants. Genet Med. 2016;18(3):452-8.